野里の金細工


 金細工とは、昔の鍛冶星のことをいう。この踊りは美里間切伊波村の加那兄という放蕩者の鍛 冶屋が真牛(モーサー)という遊郭の女を一月もひっぱり回して遊んだ末に、そのルシル(身請 けする金)も工面できず、橋から身投げしようとするが、真牛の貯えた金で遊郭の主人にルシル を払って男の面目を保つという滑稽な物語をわかりやすく舞踊化したものである。この踊りは明 治20年頃、玉城盛重が那覇のかまじい芝居と呼ばれた商業劇団で初めて踊られ、好評を博したと いわれている。野里集落では、この踊りをいつごろ村芝居に取り入れたか、定かではない。いず れにしても、野里の伝統芸能として今日まで引き継がれている。
 踊りの前半は加那兄とモーサーの二人が金を工面する場面、後半は金を工面した加那兄がモー サーと金を辻のアンマ一に届ける場面で、加那兄・モーサー・アンマーの三人の踊りになってい る。軽快な金細工の曲とコミカルでわかりやすい筋立てのため人気のある踊りである。